不在者財産管理人とは?行方不明の相続人がいる場合の対処方法を解説します
(相続人の中に行方不明の者がいる場合の遺産分割の方法)

 

1.相続人の中に行方不明の者がいる場合

遺産分割をしないまま放置した相続財産(例えば、現在空き家になっている亡くなられた方の住んでいた家)があり、売却等を考えていて遺産分割をしようと考えてはいるけれど、相続人の中に行方不明の者がいる といった場合には、2つの方法が考えられます。

 

①一つは家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任を求めます

そして、行方不明の相続人の代わりとして選ばれた不在者財産管理人と遺産分割協議を行うことにより、無事に遺産分割をすることができます。

 

②もう一つは、失踪宣告を行って不在者を死亡したものとみなしてもらい、不在者の相続人と遺産分割協議を行う方法です。

2.遺産共有の状態でできること

遺産分割が行われていない相続財産は、共同相続人が法定相続分に従った割合で共有する状態となります。行方不明の相続人も含め相続人全員で遺産を共有しているのです。

 

しかし、遺産を共有している状態ですと、各相続人が単独でできることに制限があり、全員の同意がなければ、共有している遺産全体の売却ができないなどの不都合があります。

 

具体的に説明いたしますと、共有している財産に対してできる法律行為としては、

保存行為(民法252条但書)

管理行為(民法252条本文)

変更、処分行為(民法251条)

の3つがあります。

 

空き家を例にとりますと、

保存行為各共有者が単独できる行為。共有物の現状を維持することを目的とする行為)としては、空き家の修繕(大規模修繕は除きます)、空き家の耐震検査固定資産税の納付雑草木の伐採塀の修理等が挙げられます。

 

管理行為(各共有者の持分の価格に従って、その過半数の賛成で決めなければならない行為。共有物の変更とまではいえない程度の利用行為や改良行為。)としては、共有者の中から居住する者を選ぶことが挙げられます。

空き家ではなく賃貸物件を共同相続しているような場合では賃貸借契約の解除も例として挙げられます。

 

変更、処分行為(共有者全員の同意が必要な行為。)としては、空き家を誰かに貸す賃貸借契約の締結、空き家の売却空き家に抵当権等の担保権をつけること、空き家の増改築大規模修繕を施すこと、空き家の解体を行うことが挙げられます。

 

空き家全体の売却や解体を行うためには、相続人全員の同意が必要となるのです。

 

一方、自分の相続分だけを譲り渡す(売却、贈与等)のならば、他の共有者の同意がいりません

けれども、共有状態の不動産等の持分のみを購入する方は、かなり限られているので、全体を売却する場合に比べて売却代金がかなり低くなったり、購入相手も限定されるといったデメリットが考えられます。

3.不在者財産管理人の選任が必要な場合

空き家全体を解体や売却したいといった場合には、共有者全体の同意が必要となりますので、行方不明の相続人がいますと同意が得られません。

 

そこで、行方不明の相続人に代わる者として、冒頭に述べた不在者財産管理人を家庭裁判所に選んでもらうのです。

 

不在者とは、住民票で届出している住所地や届出はしていないが実際に住んでいたところ(居所)を去って、容易にこれらの場所に戻る見込みがない者をいいます。

住所や居所に戻る見込みはなくても、現在いる場所が分かっている者は不在者とはなりません。

また、数日や1週間程度行方が不明であるといった場合ではなく、もっと長期間の行方不明であることが必要となります。

 

行方不明の者が自分の財産を管理する管理人を選んでいれば、その人が財産を管理しますが、そのようなことはごく稀ですので、共有財産が放置されたままとなることが多いと思われます。

4.不在者財産管理人の行うこと

不在者財産管理人は、家庭裁判所の監督のもとで不在者の代わりに(法定代理人として)、不在者のために財産を管理し、不在者の所在・居場所が分かった場合には財産を引き渡す義務があります。

 

不在者のために財産を管理するので高度な注意義務(善管注意義務)が求められます。

 

また、不在者の所在に気を配り、少なくとも毎年1回は不在者の住民票の写しや戸籍の附票を取り寄せ、裁判所に報告しなければなりません。

 

不在者財産管理人は選任後ただちに、不在者の財産調査を行い、財産目録を作成し裁判所に提出するとともに、財産管理期間中は財産の管理状況につき裁判所に報告せねばなりません。

 

不在者財産管理人の権限は、上述した保存行為(例えば賃料の徴収や期限の来ている借金の返済)や財産の性質を変えない範囲での利用・改良行為に限られており、勝手に財産を自分のために使ったり、処分することはできません。

 

遺産分割を行ったり、管理する財産の売却、処分を行うためには、その行為ごとに家庭裁判所の許可(不在者財産管理人権限外行為許可)が必要となります。

許可なく勝手に財産を処分したり、許可内容と異なる内容で管理する財産を処分した場合には、損害について損害賠償責任を負うことになります。

5.遺産分割協議を行う場合に特に注意すべき点

遺産分割協議を行うために不在者財産管理人の選任を求める場合に注意すべき点としては、

 

①不在者財産管理人は不在者に不利な内容の遺産分割協議に同意することはできないということです。

少なくとも法定相続分は確保されていなければ家庭裁判所の許可が下りません。

 

②また、不在者財産管理人は不在者本人ではないので、遺産分割協議に参加しても積極的に協議をまとめることはできません

そもそも不在者財産管理人の選任の申立をする段階で不在者以外の法定相続人間で遺産分割の合意ができていることが前提となり、申立時に遺産分割協議案を資料として提出する必要があります。

 

③不在者財産管理人に他の共同相続人が選ばれると、ついつい自分の利益を優先し不在者の利益をおろそかにしがちであり、利益が相反する関係(利益相反関係)となるので、他の共同相続人を不在者財産管理人に選任することはできません

6.不在者財産管理の終了

不在者財産管理人の職務は次の場合に終了します。

 

不在者の財産の管理に関する処分が取り消されたとき

不在者の所在が判明して自分自身で財産管理をすることができるようになった場合や管理する財産が無くなったとき、不在者が死亡していることが明らかになった場合や失踪宣告(失踪宣告については後述します)をなされたとき に処分が取り消されます。

 

不在者本人が不在者財産管理人とは別に財産管理人を置いたとき

 

不在者財産管理人が辞退や裁判所から解任されたとき

 

申立のきっかけとなった当初の目的(例えば、遺産分割協議)を達成したら、即座に終了というわけではありません。

不在者が現れたときには、不在者に財産を引き継いで、失踪宣告不在者の死亡が判明した場合には、不在者の相続人へ財産の引き継ぎを行った段階で終了するのです。

7.不在者財産管理人の選任申立て手続

不在者財産管理人の申立てを実際に行うにあたって知っておいていただきたい事柄

申立ができる人(民法25条1項)

利害関係人

(例えば、不在者の配偶者推定相続人共同相続人不在者の債権者等)

検察官

 

どこの裁判所に申立ができるか

①不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法145条)

 

②不在者の従来の住所地または居所地が不明なときは、不在者の財産の所在地を管轄する家庭裁判所または東京家庭裁判所(家事事件手続法7条、同規則6条)

 

申立て費用

収入印紙:800円

 

郵便切手:3,360円

(大阪家庭裁判所本庁に申立時、他庁への申立は各家庭裁判所に確認必要)

 

予納金

(管理費用、不在者財産管理人の報酬等として約30~50万円程度事案により金額が変わります)

申立時に判明するのではなくて、選任時の審理により金額が決まります。

 

司法書士報酬

 5万円(税抜き)~(当事務所の場合。事案により変動します)

※司法書士は、家庭裁判所での手続について代理人となれませんので、申立書の作成や提出書類の収集とそれらの提出を行います。


⑤その他提出する戸籍謄本等を取寄せる場合の実費 約3,000円

 

 

提出する書類

申立書

 

申立人の戸籍謄本(3か月以内のもの)

 申立人が不在者と親族関係にない場合は不要

 

不在者の戸籍謄本

 

不在者の住民票または戸籍の附票

 

申立人の利害関係を証明する書類(金銭消費貸借契約書等)

 申立人が不在者の親族の場合は②の戸籍謄本で分かるので不要です。

 

不在の事実を証明する資料

 ・警察署に捜索願を提出している場合は、その受理証明書

 ・不在者の最後の住所地に宛てて送って返送されてきた郵便物

「留置期間経過」を理由に返送されてきた場合には、そこに不在者が居住している可能性があるので、それだけでは資料となりません。

 ・不在者の最後の住所地に現地調査を行った報告書 など

 

⑦不在者の借金等も含めた財産目録とそれを裏付ける資料

 ・不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、通帳の写し、残高証明書等

 ・遺産分割協議を目的とする場合には、不在者の財産だけでなく、被相続人の財産につい

  ても必要

 

遺産分割協議を目的とする場合には、さらに

 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本

 ・相続人全員の現在の戸籍謄本

 ・被相続人の相続関係説明図

 ・遺産分割協議案

 

⑨上記添付書類のすべての副本(写し)

 

上記以外にも事案により追加で書類の提出が必要な場合もあります。

※大阪家庭裁判所本庁では、原則提出書類の原本を返却しない取扱いです。

 

 

申立から選任までどれくらいの期間かかる

裁判所の調査期間にもよりますが、申立から選任されるまで最低でも2、3か月はかかります。

 

 

司法書士のできること

当事務所にご依頼された場合、申立の代理人となることはできませんが、

申立書の作成のみならず、提出する書類である不在者の戸籍謄本等の取得遺産分割協議書案、財産目録、調査書等の作成さらに申立書類の提出を行うことができます。

 

遺産分割協議が目的の場合遺産分割後の各種相続財産の名義変更手続き(相続登記手続等)まで司法書士がおこなうことができます。

8.失踪宣告とは

失踪宣告とは、不在者の生死不明な状態が長期間継続することは不在者の財産関係や身分関係に対して利害関係をもつ者(配偶者・子供や債権者等)の地位を長期間不安定な状態におくことになってしまいます。

そこで、利害関係人のために、生死が不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせることにより、法律関係を確定させる制度です。

 

失踪宣告がなされると、不在者は死亡したものとみなされるので、相続が開始しますし、配偶者は再婚可能となります。(民法31条)

 

失踪宣告には

①生死が7年間明らかでないときの普通失踪(民法30条1項)

②戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後、その生死が1年間明らかでないときの特別失踪(民法30条2項)

の2つがあります。

 

普通失踪の場合、行方不明になってから7年以上の経過が条件なので、7年未満では対象外です。

よって不在者が行方不明となってから7年未満の場合には「不在者財産管理人」の選任

7年経過している場合には「失踪宣告」による手続きが原則となります。

 

なお7年以上経過している場合でも、遺族の感情やその他の諸事情などから死亡扱いすることに抵抗や問題が生じる場合などには「不在者財産管理人」の選任の手続きによることになります。

当事務所に不在者財産管理人の選任申立てをご依頼された場合、申立の代理人となることはできませんが、申立書の作成のみならず、一緒に提出する書類一式の収集作成申立書類の提出、さらには遺産分割協議が目的の場合には、遺産分割後の各種相続財産の名義変更手続き(相続登記手続)までのすべてを当事務所で行うことができます。

ご面倒な手続は当事務所にお任せください。

 

当事務所では、遺産分割協議書の作成遺言書の作成、遺言執行者への就任、相続登記を始めとした遺産相続手続きを考えておられる方のサポートを全力でさせていただきます。

 

遺言・相続成年後見、贈与を始めとした不動産登記は当事務所の得意とする分野です。

「わかりやすさ」「親しみやすさ」「丁寧さ」をモットーにご対応いたしますので、

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初回の相談は無料です。 

 

遺言書の作成や相続に関するお悩み、成年後見、贈与や売買・抵当権抹消・住所変更を始めとした不動産登記に関しては、大阪市淀川区司法書士おおざわ事務所へお声がけください。

当事務所に関係のない分野であっても、税理士、弁護士等他の専門家を無料でご紹介することも可能です。

少しでもあなたのお力になれれば幸いです。

 

 

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