成年後見制度の重要な4つの注意点を専門家がわかりやすく解説します(勘違いや、こんなはずでは… とならないために)

多くの方々にとって成年後見制度を意識するようになった動機として、

・預貯金等の管理、解約

・保険契約

・身上監護(介護の必要や施設への入所等)

・不動産の売却や解約等の処分

・相続手続き

等が挙げられると思います。

 

成年後見制度の申立ての動機は様々ですが、重要な注意点が4つあります。

それは

 

成年後見制度はあくまでご本人の利益を最優先に考える制度であるということ(ご本人の保護が目的≠親族のための制度)

 

後見等はその申立ての動機となった問題が解決したら、直ちに終了するのではなく、一度開始するとご本人が判断能力を回復もしくは死亡するまでずっと続くものであるということ

 

ご本人の事情等をよく知る子供等の親族を後見人等の候補者として申立てたとしても、家庭裁判所の判断で、候補者に挙げられた人物以外の者(例えば専門家である司法書士等)が後見人として選ばれたり候補者が後見人に選ばれると共にその他の者(司法書士等)も一緒に後見人に選ばれて後見人が複数名となったり、後見人を監督する後見監督人が選ばれたりする可能性があるということ

 

成年後見人等が選ばれたら、本人に代わって何でもできるというわけではなく、後見人等にはできること・できないことがあるということ

 

以上の4点です。

それぞれにつきご説明いたします。

1.ご本人の利益を最優先に考える制度(本人の保護が目的)

動機として多い不動産の処分(土地建物の売買や本人の不動産を担保にしてお金を借りる等)を例にあげますと、本人が所有する不動産の売却や本人の不動産を担保にしてお金を借りる(抵当権等の担保権を設定)といったことをするためには、本人にとっての必要性・相当性が必要です。

そのことで得られるお金が本人のために使われるのかどうかということがポイントです。

 

本人が施設へ入所するための費用を工面するために不動産を売却するのなら妥当ですが、そのお金を子供や配偶者等の親族の遊行費や生活費、事業資金等のために使う場合は妥当性がないので、家庭裁判所が認めません。

 

だからといって、ただ本人にとって利益があればよいというわけでもなく、本人にとっての必要性がなければできません。

本人が生活をするための十分な預貯金等を有している場合や、施設に入るための預貯金が十分にあるような場合、本人にとって不動産をあえて売却しなければならないという必要性は認められません。

 

また、家の増改築や修繕の費用を工面する等のために、本人に借金をさせることも原則として認められません。

 

さらに、本人が現在住んでいる建物や、施設への入所・病院に入院する前に住んでいた建物(居住用不動産といいます。)を売却や賃貸契約を解約する場合には家庭裁判所の許可を得なければなりません。

本人が帰ることのできる場所、最後の心のよりどころとなる場所である住み慣れた自宅を売却等するには、処分してもやむをえないような本人にとってよほどのお金を工面する必要性が求められるのです。

 

 

預貯金等の管理、解約を例に挙げますと、本人名義の預貯金の解約の場合ならば、施設へ入所するための費用を工面するためや、本人のための介護ベッドの購入や介護費用を確保するため等 定期預金等を解約する必要性が本人にとってあればよいですが、

例えば「これまで本人のキャッシュカードを使って普通預金からお金を引き出していたが、その残高が少なくなってきたから、今度は定期預金を解約して普通預金を補充したい」というような場合、これまで引き出されていた金銭の使いみちが本人の生活費のためならばよいですが、親族の生活費に充てられていた場合には問題がある可能性があります。

 

ご本人に親族に対する法律上の扶養義務があるならば、本人の預貯金を親族の生活費に充てることも可能ですが、扶養義務がないにもかかわらず、本人の金銭を親族のために使っていた場合には、選任された後見人により、その金銭の返還を求められることもありますし、ご親族による経済的な虐待を疑われることもあります。

 

 

また、相続手続を例にとりますと、遺産分割協議の場面(相続財産をどのように分けるか、誰が具体的にどれだけもらうかという話合い)では原則として本人の法定相続分の確保が求められます。

 

後見人である親族と本人が共に相続人であるという場合、親族が後見人になったからといって、勝手に本人の相続分をゼロ、後見人の相続分をその分多くするといったことはできません。

そのような本人と後見人の利益が対立する場面では、本人の利益を最優先に考えるという観点から、後見人に代わって本人を代理する特別代理人等の選任が必要となります。(後見監督人が選ばれている場合には、後見監督人が本人を代理します)

 

 後見人は本人の財産を管理するにあたって、自分の財産の管理以上に厳格な態度や管理が要求されます(善管注意義務)ので、利殖を目的とする株式の取引リスクのある金融商品の購入といったこともできません。

本人の財産を大きく減らす可能性のあるような投機的な行為は認められません。

 

相続税対策としての資産運用も、本人のためではなく相続人の利益のための行為なので原則としてできません。

 

まとめますと、リスクを少なく安全に、本人の保護のために必要な限度において行動すること、本人の財産を守っていくことが要求されるのです。

したがって、成年後見人等が選ばれたからといって、相談者や配偶者等の親族が当初意図していた動機や目的が思い通りに達成できるとは限りません。

 

2.一度開始するとご本人が回復もしくは死亡するまでずっと続く

成年後見制度を利用して当初の課題だった問題(預貯金の解約や遺産分割協議等)を解決できれば、後見人の役目は終わり、成年後見制度も終了すると思いこんでおられる方もいると思いますが、決してそうではありません。

 

あくまで本人の保護を目的にする制度である以上、本人が判断能力を回復したり、亡くなって本人を保護する必要が無くなるまでずっと続きます。

一度開始すると、長いお付き合いになる制度なのです。

 

後見人は本人の財産について、家庭裁判所への報告義務がありますので、その財産がどのように使われたのか、収支報告財産目録を作って、しっかり管理し、裁判所へ報告しなければなりません。

後見人が本人の同居の親族であろうと、会計は別々にしなければならず、収支報告や財産目録の作成、裁判所への報告も、本人の判断能力が回復または本人が亡くなるまで、ずっと続けなければなりません。

 

また、司法書士等の専門家が後見人になれば、ご本人が亡くなるまで報酬(家庭裁判所が決定します。おおよその目安としては毎月約2万円程。事案や難易度により増額されます。)もずっと継続して支払っていかねばなりません。

3.家庭裁判所の判断で候補者以外の人物が後見人として選ばれることもある

成年後見の申立てを行うときに、後見人等の候補者(例えば、子や配偶者)をあげることができますが、家庭裁判所は申立書に記載されている後見人候補者の希望に拘束されることなく本人の利益にとって誰が一番ふさわしいかという観点から、候補者以外の法律の専門家である司法書士等を後見人として選任することもできます。

誰を後見人等として選ぶのかということは、家庭裁判所だけが決められるのです。

 

また、仮にご親族が後見人に選ばれても、その他にも専門家である司法書士等を追加で後見人として選んだり(後見人が複数名になるパターン)したり、親族後見人等を監督するための後見監督人を追加で選んだりすることもあります。

 

 そして、当初思い描いていた後見人候補者が後見人にならなかったり、複数の後見人等が選ばれる事態になりそうだからといって、成年後見の申立てを取下げてなかったことにしようとしても原則できません。

一度申立てを行うと、申立ての取下げをするためには家庭裁判所の許可が必要となります。

申立てを開始したということは、本人の利益を保護する何らかの必要性があるということですから、その課題が解消されてもいないのに、勝手な取下げを許さないわけです。

 

 また、本人に多額の預貯金がある等多くの財産を持っている場合には後見制度支援信託の利用を指示されることもあります。

 後見制度支援信託とは、ご本人の財産の一部を銀行等に預けて(信託して)親族後見人等の管理する財産を少なくして、これにより親族後見人等が私的に流用する等不正行為を行うことを防止しようとするものです。

最初に司法書士等の専門家が後見人となって信託銀行と信託契約を締結して、大部分のお金を預けます(信託します)。

この信託が完了した後、専門家の後見人は辞任して親族後見人に職務を引き継ぎ、その後は親族後見人が残った手元の現金や預貯金のみを管理していくという制度です。

 

基本的には、ご本人の財産が多額であるような場合や遺産分割協議を控えているような場合、

親族間で対立があるような場合等複雑な場合には、司法書士等の専門家が後見人に選ばれることが多いです。

4.後見人等には「できること・できないこと」がある

親族ではない司法書士等の専門家の後見人にできることは法律行為だけで、実際の本人の介護や病院への付き添い等のいわゆる事実行為はヘルパーさんや介護事業者の方が行うということです。

 

例えば、本人が病院等に通うための付き添い入院の準備、衣類の洗濯、日用品の購入や食事の用意等のいわゆる事実行為と呼ばれるものについては専門職後見人等が自らがすることはなくそれらをしてもらうべく業者の方に委託したり、ヘルパー派遣契約をしたり等といった法律行為をすることが後見人のお仕事です。

 

 

また、身元保証・身元引受人になったり、施設利用料・入院費等に関する債務の保証人になったり、医療行為の同意遺体遺品の引取りもできません

 

例えば、身元保証や債務の保証人についてですが、本人の債務(借金や支払い)を保証して仮に本人に代わって債務を立て替えた場合、本人に対して求償権(立替て支払った分を返しなさいという権利)を持つことになり、本人と利益が相対立する関係になることから認められません。

本人を守るために本人の味方でなければならない立場なのに、本人から取り立てる立場(本人と対立する立場)になることはできないのです。

 

ただし、本人の債務を保証することはできませんが、本人の財産の範囲で施設や病院の利用料等の支払はできます。

むしろ、これをしないと、仕事を怠ったことを理由に家庭裁判所から解約される可能性もあります。

 

本人が亡くなられた後の遺体や遺品の引取りに関しては、後見等は本人が死亡するとただちに終了するので、後見人等の職務ではありません。

遺体や遺品の引取りは相続人が行います。

 

したがって、成年後見等を利用すれば何でもしてもらえるということはなく、できることは限られています。

できること・できないことがあることを知ったうえで、ご親族等の協力や支援もかかせない制度であることを、ご理解していただけたらと思います。

 

 

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