【成年後見の種類】法定後見・任意後見・保佐・補助
をわかりやすく解説します

1.成年後見とは

成年後見とは認知症・知的障害・精神障害等や高齢による判断能力や記憶力の低下など判断能力が不十分な方を法律面、生活面で支援するための制度です。

 

現代社会は契約社会です。

スーパーでお肉や野菜を買ったり、あるいはコンビニでお茶を買うことも、わざわざ契約書を作って、署名したり印鑑を押したりはしませんが、契約です。

行政の介護や福祉サービス等も契約をすることにより受けることができます。

 

そして、契約するためには自分の行動によってどんな結果が起こるのか、そのことによってどんな責任を負うのかといったことをしっかり予想し判断する能力(判断能力が必要です。

 

認知症等によって、この判断能力が低下したり、記憶力が低下して不十分な方の場合、そのために不利益を被ってしまうおそれがあります。

 

例えば、不必要な高価な布団や鍋を何度も購入するといった消費者被害にあったり入院費や公共料金の支払が滞ったり必要な福祉や介護サービスの存在を知らなかったり必要な福祉や介護サービスの内容を理解できないために受けられないといったこともあります。

 
 

そんな不利益を受けないようにするための制度が成年後見です。

 

●成年後見とは、判断能力が衰えた高齢の方や精神上の障害がある方にも、障害のない方と同じように生活をしてもらい、介護や福祉サービスを受けてもらえるようにするための制度です。

 

 

成年後見はまず、大きく法定後見任意後見の2種類に分かれます。

(1)法定後見

(2)任意後見

 

 

法定後見は、認知症等によって今現在判断能力が低しているので、すぐに保護が必要な場合に利用されます。

 

任意後見は、今はまだ大丈夫だけれど、将来の不安に備えて事前に、

①将来後見人になる人
②お任せする内容

を決めておくことができる制度です。

 

今現在判断能力が低下していて保護を必要としているか、今はまだ大丈夫かが、法定後見と任意後見の区別のポイントです。

 

 

そして、法定後見はさらに、判断能力の低下の程度によって、以下の3種類に分かれます。

後見

保佐

補助 

 

本人の判断能力の低下の程度に応じて、上記①②③の利用できる制度が変わります

後見が本人の判断能力低下が一番著しい場合(判断能力が一番低い場合)に利用され、次いで②保佐、 ③補助の順になります。

補助判断能力低下の程度が一番軽い場合に利用されます。

 

本人の判断能力の低下の程度を見極めてくれるのは、司法書士でも裁判所でもなくお医者さんです。

 

成年後見の申立をするときには、必ず医師の診断書を提出しなければなりません。

お医者さんが色々な検査等をして、本人の判断能力がどの程度であるのか、どの認知症であるのか等の診断をしてくれます。

 

この診断書の判断に従って、裁判所はどの制度を利用できるか判断をします。

 

ちなみに医師は、精神科の専門医である必要はなく、本人の事情をよく知るかかりつけのお医者さんで構わないとされています。

 

2.法定後見

1.後見

●どのような場合に利用されるのか?

 

分かりやすい極端な例ですと、

しっかりしている状態がほぼなく、家族の判別さえ困難になっておられる方

 

そこまでの状態ではないですが、

契約内容を理解することや、記憶力の低下により、自ら契約したり財産の管理をすることが難しいため、常に本人の代わりに誰かに判断してもらったり、契約をしてもらわないといけないような状態で、仮に本人が自ら契約をしても、原則いつでも取り消せるようにしておく必要がある場合

などに利用されます。

 

②のような状態の高齢者の方は多いのではないでしょうか?

 

 

<できること>

財産管理に関する法律行為

預貯金の管理不動産等の売買や賃貸借契約の締結、遺産分割協議等)

 

生活・療養看護に関する法律行為

介護契約施設の入所契約や入院等の医療契約を結んだりすること、身上監護とも言われます)

 

について本人に代わって契約を行い支援します。

この本人に代わって支援してくれる人を成年後見人と呼びます。

 

 

 

日常生活に必要な買い物をしたり、食事をつくったり、掃除をする、病院の付き添いや入院のための衣服の用意等のいわゆる事実行為と呼ばれるものは後見人等の仕事ではありません。

 

あくまで本人のために成年後見人が意思決定を代わって行う、施設の入所契約や介護契約等の法律行為を代わって行う制度です。

 

実際の介護や看護を行うのはヘルパーさんで、これらの事実行為をしてくれる方の手配や契約をするのが後見人の仕事です。

保佐・補助の場合も同様です。

 

実際の介護・看護行為や入院・病院の付き添い等は、後見人・保佐人・補助人の仕事ではありません。

それらはご親族や介護事業者の方やヘルパーさん等が行います。

 

また、後見人は被後見人等が行なった不適切な法律行為を取消して、安心して生活できるよう支援します。

 

 ただし、後見を受けている方(被後見人)が結婚をする、養子縁組をする、離婚をする等、いわゆる身分上の行為と呼ばれるものの代理はできません。

(それは本人の意思が尊重され、本人しか決められない事柄だからです)

 

また、食料品や衣料品等の日用品の購入等の「日常生活に関する法律行為」については 本人の自己決定権を尊重して取り消すことができません。

 

2.保佐

●どのような場合に利用されるのか?

 

①本人の判断能力に衰えがみられ、しっかりしていることもあるけれど、契約の内容をよく理解できないことが多かったり、

 

②買い物で1万円札を出したのか5千円札を出したのか分からなくなることが多いなど、間違って契約するおそれが強い場合

 

③日常的な買い物なら自分でできても、不動産の売買やお金の借入といった重要な財産行為はとても任せられそうにない場合

 

に利用されます。

本人をサポートしてくれる人を保佐人と呼びます。

 

保佐の場合、後見とは異なって、基本的に財産の管理や契約等は本人自らが行い

①保佐人はそれらの行為について相談を受けて同意を与えたり、

②時には勝手にされた行為を取り消したり、

③また、特定の行為だけ代理してもらうことで

本人の保護、支援を行います。

 

保佐人の同意が必要となる重要な財産行為民法13条第1項に定められています。

例えば、不動産やお金を貸すこと、お金を借りたり・保証人になること、不動産・自動車等の重要な財産の売買を行うこと、相続の承認・放棄・遺産分割をすること、裁判すること等、全部で9項目が定められています。

 

必要に応じて保佐人の同意が必要な行為を9個以外にも追加することもできます。

 

また、特定の行為についてだけ保佐人に代理権を与えることで、本人の代わりにその行為をしてもらうこともできます。

(例えば、福祉関係施設への入所契約や費用の支払についての代理権等)

 

保佐人の同意なく、本人が定められている重要な行為を勝手にした場合、保佐人はその行為を取り消すことができます。

3.補助

●どのような場合に利用されるのか?

 

本人の判断能力が不十分な場合に利用され、

①食料品や衣料品等の日用品の購入は自分でできるけれど、物忘れがひどくなり、米を研がずに炊いてしまうなど家事の失敗が増えてきた場合

 

②不動産の売買やお金の借入といった重要な財産行為についてはできるかどうか不安

 

といった場合に利用されます。

本人をサポートしてくれる人を補助人と呼びます。

 

 

補助の場合も保佐と同様に補助人が同意権、取消権、代理権を行うことによって、本人の支援・サポートを行います。

ただし、保佐よりも本人の判断能力の低下の度合いが軽いので、同意等が必要な行為が9個全部となってはおらず、そのうちの一部の行為だけ同意してもらうといった形になります。

例えば、10万円以上の商品を購入する場合には補助人の同意が必要等

 

 

本人の判断能力の低下の度合いが一番軽いので、補助の制度の申立て・利用にあたっては、後見や保佐とは違って、

本人自らが申し立てをするか、

●補助を開始してもらうことに本人が同意をしている

必要があります。

 

成年後見制度の中でも、判断能力の衰えが一番軽い方に利用される制度なので、本人の意思、自己決定権を尊重する趣旨です。

 

後見・保佐では、親族が申立てを行う際に、本人の同意は要件とされていません

 

 

任意後見

任意後見制度と法定後見制度の大きな違いは、

 

本人自らが

任意後見人になる人

 

②任意後見人に与える代理権の範囲(どのようなことをお任せするのか)を決めることができる

というところにあります。

 

法定後見では、申立てをした時に法定後見人、保佐人、補助人になってほしい人(候補者)の希望(例えば親族に後見人になってほしい)を言うことはできても、裁判所は本人の利益や財産の規模等を考えて、その希望(候補者の記載)に拘束されることなく、第三者である司法書士等の専門家を選ぶことができます。

 

それに対して、任意後見では本人自らが希望した人が必ず任意後見人に選ばれます

 

任意後見制度を利用するためには、本人の希望する任意後見人になってほしい人物との間で任意後見契約を結びます。

今は大丈夫かもしれないけれど、自分の判断能力等が衰えた時に備えて、自分の生活や病院、施設の利用等の療養看護面や財産管理に関する事柄まで、どんな支援をしてほしいのか、その範囲をしっかり決めて公証役場で公正証書という形で契約書を作ります。

 

この任意後見契約を結んだだけでは、任意後見は始まりません。

実際にご本人の判断能力が衰えた時に、任意後見監督人という任意後見人を監督する人を裁判所に選んでもらったときから、任意後見契約で定めた内容に従った支援が始まるのです。

 

 

◇メリット

自分が選んだ信頼できる人に任意後見人になってもらえること

②判断能力が衰えた時に受けられる支援内容(お任せしたいことがら)を事細かに自分で決めることができること

③判断能力が十分な現在に、将来に備えて契約しておくので将来の不安が解消されること

 

 

◇デメリット

①財産管理等をお任せしようと思える程の信頼できる人を見つけることの難しさ

②そのような信頼関係を築き上げるまでに時間がかかること

③法定後見人のような取消権がないので、任意後見が開始しても本人自らが判断能力の不十分のままに行った契約等の取消ができない

 

当事務所では、成年後見(法定後見・任意後見)を考えておられる方のサポートを全力でさせていただきます。

認知症等のご本人様、ご家族、ケアマネジャーなどの支援されている方からのご相談、お問い合わせをお待ちしております。

 

遺言・相続成年後見、贈与を始めとした不動産登記は当事務所の得意とする分野です。

 

「わかりやすさ」「親しみやすさ」「丁寧さ」をモットーにご対応いたしますので、

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